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AI×Webディレクター養成講座

『AIは若い子に任せてます』という社長が、一番危ない

「AIは若い子に任せてます」という社長が、いちばん危ない

こんにちは。株式会社セレンデック代表の楠本です。

弊社は社内のチャットにAIを常駐させています。スタッフがそこに質問すると、AIが答える。

私の分身、いやそれ以上の存在となり会社の組織OSとなるAIでAIPM君(プレイマネージャー)部長と呼んでいます。

私だけでなく会社全員のアシスタント、兼メイン業務のスタッフとしてwebサイトの更新作業から、MFを利用した経理業務、各種データの集計、リサーチ、企画書作成、確認、議事録の作成とTODOリスト作成、オンラインMTGのURL発行などなど・・上げたらきりがないですが、あらゆる業務をこなしています。

私が不在でもスタッフの皆さんは困らないですが、このAIがとまると何も進まなくなってしまいます。

まあ、カスタマイズしまくった便利なAIです、ようわ(笑)。普通のAIエージェントです。

ただ1つ、クロードコードやコーデックスなどのAIエージェントちょっと違うところがあります。それは、そのやり取りが、全部私も含めて見えます。

これは監視のためではなく、たまたまチャットワークに乗せたらそうなった、というだけなんですが、見えるようになって分かったことがありました。

聞けば答えが返ってくる環境になると、人は途中まで考えたところで手を止めます。

これは能力の話ではありません。私自身もそうです。AIに聞けば数秒で返ってくるなら、5分考えるより聞いたほうが速い。誰がやっても、そうなります。

そして、ここが今日の要点なのですが——そのやり取りが見えていたので、私はその場で補足を入れられました。「その答えだと、うちの案件では通らないよ」「その部分は最近変わってる」と、すぐ言える。

見ていなければ、言えません。

今日はこの話をします。AIを部下に任せている社長には、この場面が見えていません。

「AIは若い子に任せてます」

社長の方とお話ししていると、この言葉をよく聞きます。

「AIね、うちも入れてますよ。若い子に任せてます」

「詳しいスタッフがいるので、そっちに」

「自分は分からないので、担当者を決めました」

一見、まっとうです。権限移譲は良いこととされていますし、社長が全部やる必要はありません。私も普段は「社長が手を動かすな」と言っている側です。

でもAIについては、これが危ないと思っています。理由を書きます。

AIは、それらしい嘘を混ぜてきます

まず技術的な話を1つだけ。AIは、間違ったことを、間違っていないような顔で書きます。

しかも厄介なのは、間違い方が自然なんですよ。人間が間違えるときは、たいてい不自然さが残ります。文が崩れたり、話が飛んだり。AIの間違いは、文章としては完璧です。だから読んだだけでは分かりません。

数字も、出典も、法律の条文も、それらしく出てきます。それが正しいかどうかは、その分野を知っている人にしか判別できません。

ここが「任せる」の問題です。任せた相手が判別できるかどうかを、任せた側が判別できない。

聞けば返る環境では、考える工程が短くなります

冒頭に書いたことを、もう少し丁寧に書きます。

聞けば答えが返る環境では、考える工程が短くなります。これは仕組みの話で、誰の責任でもありません。

私が同じ立場でも、そうします。5分考えて出す答えと、5秒で返ってくる答えの精度が同じくらいなら、聞いたほうが合理的だからです。むしろ、聞かずに時間をかけるほうが、会社にとって損なことすらあります。

問題は、その答えが正しいかどうかを、誰が見るかです。

弊社の場合、たまたま私に見えていたので、その場で補足を入れられました。「その答えだと、うちの案件では通らないよ」。この一言があるかないかで、次の工程がまったく変わります。

見ていなければ、言えません。

「若い子に任せてます」という状態は、この補足を入れる人がいない状態です。AIが出したものが、そのまま次の工程に流れていきます。

社長が触っていないと、何が起きるか

具体的に、3つ書きます。

1つめ。AIの出力を承認だけする人になります。

部下が「AIで作りました」と持ってくる。中身の妥当性は判断できない。でも決裁は自分が押す。判断せずに責任だけ取るという、いちばん危ない状態です。

2つめ。どこまでできるかが分からないので、指示が出せません。

「これAIでできない?」と聞くには、AIに何ができるかを知っている必要があります。知らないと、部下が「できません」と言ったときに、それが本当かどうか分からない。面倒な仕事を断る口実に使われても気づけません。逆に、無茶な指示を出して現場を疲弊させることもあります。

3つめ。判断の基準が、社内に育ちません。

AIの出力を「これは使える/これは使えない」と分ける基準は、経験から来ます。社長がその経験を積まないと、会社の中で誰も基準を持てません。若手は判断の経験が浅いので、そこに基準を作らせるのは無理があります。

正直に書きます。私も、教わるのが少し嫌でした

ここからは、根拠のない推測を含みます。先に「これは推測です」と書いておきます。録音を掘っても裏は取れませんでした。

「若い子に任せてます」と言う社長の中には、教わるのが嫌という気持ちがある方が、一定数いらっしゃると思っています。

自分より年下の、部下の立場の人間に、手取り足取り教わる。これは、けっこう抵抗があります。分からないことを分からないと言う。同じ質問を2回する。操作でつまずく。その姿を、自分の会社の部下に見せることになります。

私にも心当たりがあります。弊社は私が先に触ったので結果的に避けられましたが、もし社内の若手のほうが先に詳しくなっていたら、素直に教わったかどうか自信がありません。

「忙しいから」「自分の仕事じゃないから」は、たぶん半分は本当で、半分はこの気まずさを避けるための言い方です。私が同じ状況なら、たぶん同じことを言います。

繰り返しますが、これは推測です。ただ、当てはまる方がいらしたら、それは能力ではなく、ただの気まずさなので、乗り越える価値はあります。

任せていいものと、任せてはいけないもの

誤解のないように書いておくと、全部を社長がやれとは言っていません。

  • 手を動かす作業 → 任せていい
  • ツールの選定や設定 → 任せていい
  • 細かい使い方の習得 → 任せていい
  • 出てきたものが良いか悪いかの判断 → 任せてはいけない
  • その判断に責任を持つこと → 任せられない

分け方は単純で、「間違っていたときに、誰が損をするか」です。損をするのが会社なら、それは社長の持ち場です。

そして判断するには、自分でも一度は触っている必要があります。触ったことがない人が「これは違う」と言っても、部下は納得しません。逆に、触っていれば「その出し方だと平均的な答えしか出ないよ」と具体的に言えます。

「担当者を決めました」の落とし穴

「AI担当を決めました」というお話も、よく聞きます。これも、決め方によっては危ないです。

いちばん多いのが、若手で、パソコンに強そうな人を1人指名するという形です。悪くはないのですが、その人に何が起きるか想像してみてください。

まず、本業を持ったまま兼務になります。AIの調査は、本業の合間です。時間が足りません。

次に、社内から「これAIでできない?」という質問が集まります。答えられないと自分の評価に響く気がするので、無理をして調べます。ここまではまだいい。

問題はその次で、うまくいかなかったときに、その人のせいになるんですよ。「AI入れたけど、あんまり使えてないよね」という言われ方をする。決めたのは社長なのに、責任だけがそこに落ちます。

そうなると何が起きるか。次から誰も担当をやりたがりません。そして「うちはAI無理だった」という結論が、社内に残ります。

これを避けるには、担当を置くなら、判断と責任は社長が持つと明言しておくことです。担当は調べる人であって、決める人ではない。「うまくいかなかったら私の判断ミスです」と先に言っておく。これだけで、担当は動きやすくなります。

「詳しくないから」で止まらないための、言い方

もう1つ、細かいですが効いたことを書きます。

社長が触り始めると、必ず分からないことが出てきます。そのときに聞き方を変えるだけで、気まずさがかなり減ります。

「教えて」ではなく「一緒に見て」と言うことです。

「教えて」は、教える側と教わる側の関係になります。年下の部下に対してこれを言うのは、正直やりにくい。「一緒に見て」なら、横に並びます。同じ画面を見て、「これどう思う?」と聞ける。

さらに言うと、社長が分からないところで詰まっている姿を見せるのは、悪いことではありません。むしろ、社内で「分からないと言っていい」空気を作ります。

弊社の場合、私がAIの使い方で明らかに遠回りをしていて、スタッフに「それ、こう書けば一発ですよ」と言われたことが何度もあります。そのたびに社内の空気が少し変わった実感があります。社長が間違えても大丈夫なら、自分も間違えていい、と思えるからです。

「分からない」を言えない社長がいる会社では、誰も「分からない」と言えません。これはAIに限らず、全部の業務でそうです。

1週間だけ、自分の業務で1つ試してください

じゃあ何をすればいいか。最小の入口を1つだけ書きます。

自分の実務の中から、1つだけAIにやらせてください。期間は1週間で十分です。

条件は3つです。

  1. 自分がよく知っている業務にする(判別できるので、間違いに気づけます)
  2. 失敗しても誰にも迷惑がかからないものにする(社内の下書き、議事録の整理、メールの草案など)
  3. 部下に頼まず、自分で入力する(ここが肝心です)

3番目が大事です。部下にやってもらうと、また「任せる」になります。下手でいいので、自分で打ってください。1週間やると、「AIはこのくらいはできて、このへんは怪しい」という感覚がつきます。この感覚だけあれば、判断はできます。

詳しくなる必要はありません。弊社のスタッフのほうが、細かい使い方は私より詳しいです。それでいいんです。社長に必要なのは操作の習熟ではなく、「これは違う」と言える感覚です。

「うちの業務は特殊だから」で止まる前に

AIの話をすると、必ず出てくるのがこれです。「うちの業務は特殊だから、AIは無理だと思う」。

半分は本当です。業界の慣習、独自のシステム、取引先ごとに違うルール。AIが最初から知っているはずのないものは、たくさんあります。

ただ、ここで1つ確かめていただきたいことがあります。「特殊なのは、業務全体ですか。それとも、業務の中の一部ですか」

弊社の経験では、ほぼ全部が後者でした。たとえば見積書を作る仕事があるとして、

  • 単価の決め方 → たしかに特殊。弊社の過去の経緯や、お客様ごとの事情が入ります
  • 必要な項目を洗い出す → 特殊ではありません
  • 書式に流し込む → 特殊ではありません
  • 書き漏れがないか確認する → 特殊ではありません

特殊なのは、1つめだけなんですよ。それ以外は、どの会社でも似たようなことをしています。

「業務が特殊だ」と言うとき、たいていはこの1つめのことを指しています。そして1つめは、確かに人が決めるところです。でも、残りの3つまで人がやる理由はありません。

だから、「特殊だから無理」ではなく「どこが特殊なのかを1つに絞る」ところから始めてください。絞れたら、そこ以外は試せます。

これは触ってみないと分かりません。触っていないと、業務がひとかたまりに見えるんですよ。触ると、中に線が引けるようになります。この線を引くのが、たぶん社長の仕事です。

触ってみて分かる「できること」と「できないこと」

「1週間やれ」と言われても、何が分かるのかが見えないと動きにくいと思うので、触ると具体的に何が判別できるようになるかを書いておきます。

できること側は、たとえばこういうものです。

  • 長い文章を要約する、構成を作り直す
  • 議事録から、決まったことと持ち帰りを分ける
  • メールや案内文の下書きを作る
  • 表の数字を眺めて、おかしそうな行を挙げる
  • 分からない用語を、業界の文脈つきで説明させる

このあたりは、1週間触れば「これは任せていいな」という感覚がつきます。そして、この感覚がついた社長は、部下が「できません」と言ったときに「いや、それはできるはずだよ」と言えます。

できないこと側は、こうです。

  • 社内の事情を踏まえた判断(AIは社内の力関係も過去の経緯も知りません)
  • お客様の言っていないことを察する
  • 最新の、まだ書かれていない情報
  • 数字の出どころを保証すること
  • 間違っていたときに責任を取ること

最後の1つが決定的です。AIは謝りますが、責任は取りません。取引先に迷惑をかけたとき、頭を下げに行くのは人です。だから、責任が発生する判断は、その責任を取る人が握るしかない。これは技術がどれだけ進んでも変わりません。

そして、この線引きは触らないと分かりません。外から聞いた話だと「AIは何でもできるらしい」か「AIはまだ使えないらしい」の、どちらか極端なほうに寄ります。どちらも間違いです。

1週間で十分だと書いたのは、この線引きの感覚が、それくらいでつくからです。弊社のスタッフのほうが操作は上手ですが、この線引きは私のほうが早く分かりました。理由は簡単で、私は判断する立場でずっと仕事をしてきたからです。社長には、その蓄積があります。触りさえすれば、いちばん早く判別できるようになるのは、たぶん社長です。

まとめ

整理します。

  1. 弊社は社内チャットにAIを置いていて、全員のやり取りが私にも見えます
  2. 分かったのは、聞けば答えが返る環境では、考える工程が短くなるということでした。能力ではなくそういう仕組みになっているだけで、私自身もそうです
  3. 見えていたので、その場で補足を入れられました。見ていなければ入れられません
  4. 「若い子に任せてます」は、この補足を入れる人がいない状態です
  5. AIはそれらしい嘘を混ぜます。しかも文章としては完璧なので、知らない分野では判別できません
  6. 社長が触らないと、①判断せずに責任だけ取る ②指示が出せない ③社内に判断基準が育たない
  7. 「教わるのが気まずい」があるのではないか、と思っています。ただしこれは推測です
  8. 任せていいのは作業・設定・習得。任せてはいけないのは判断と責任です
  9. 1週間、自分がよく知っている業務を1つ、自分の手でAIにやらせてください。詳しくなる必要はありません

操作は任せていい。判断は任せられない。今日はそれだけです。

弊社も、最初から分かっていたわけではありません。たまたま私が先に触ってしまっただけです。もし社内の誰かが先に詳しくなっていたら、私も「任せてます」と言っていた可能性が高い。そういう意味では、運が良かっただけです。

だからこそ、同じ立場の社長の方には、運に頼らないでほしいと思っています。1週間です。それで、部下の報告を判別できる社長になれます。



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