AIが得意な仕事・苦手な仕事──「なんでもAIで解決」は本当か?
こんにちは。「プログラムコードはAIで生成できても、プログラム自体はなくならないんだ!AIは敵じゃないんだ!」という、プログラムの内なる声が聞こえてくる、株式会社セレンデック代表の楠本です。
最近、「AI使えば何でもできるらしいですよ!」という声をよく耳にします。ニュースでもSNSでも、「AIで売上◯倍!」「AIで業務が一瞬に!」みたいな言葉が踊っていて、なんというか……こう、ちょっとだけ違和感を覚えるんですよね。
実際のところ、私たちのような中小企業の現場では、AIを入れてうまくいったケースもあれば、「あれ?逆に面倒くさくなったぞ…?」という失敗パターンもあります(笑)
今回は、そんな現場視点から「AIが得意なこと・苦手なこと」について、プログラムとの違いも交えて、改めてわかりやすく整理してみたいと思います。
AIとプログラムの違い──“決まったルール” vs “膨大な経験”
まず大前提として、AIと従来のプログラムは“考え方の根本”が違います。
🔧 プログラム:ルールベースの機械
- 「こう入力されたら、こう処理して、こう出力せよ」という手順を人間が細かく設計
- Excelのマクロ、業務フローの自動化などが代表例
- 正確さ・反復性・速度に強い
🧠 AI:データベースの“経験”から学習
- 膨大な過去データを元に「たぶんこうだろう」と予測・分類・生成を行う
- 明確な手順ではなく、“結果の傾向”を見て動く
- 会話、画像認識、文章生成などが得意
つまり、
プログラムは「確定的な処理」、AIは「確率的な予測」
さらに大事な視点として、
- AIの出力は毎回「生成」される=同じ指示でも微妙に異なるアウトプットが出る
これは「柔軟な応答」「人間っぽさ」という強みにもなりますが、逆に、
- 毎回同じ結果を出したい
- 手順を固定化したい
- 品質のブレを防ぎたい
という場面では、AIよりプログラムやRPAのほうが向いているんです。
つまり、
- 毎回同じことを、同じようにやるなら“プログラム”
- ケースバイケースで、考えながら対応するなら“AI”
この使い分けが、めちゃくちゃ重要です。
そして最近は、
- AIでプログラムコードを生成する
- AIが条件を理解してRPAを呼び出す
- Google Apps Script(GAS)でGmailやスプレッドシートと連携する
- DifyなどでノーコードAIアプリを構築する
- Zapierで他ツールと連携して自動処理を構築する
といった“ハイブリッド型”の活用が爆発的に増えています。
私たちも、「AIで要件定義 → 自動でスクリプト生成 → プログラムが処理実行」といった流れで、業務の自動化を進めています。
要は、
AIとプログラムは「競合」じゃなく「共存」
なんですよね。
この視点を持つだけでも、「AIだから全部任せよう」という発想から、「これはAI、これは人間、これはプログラム」と分けて考える土台になります。
AIが得意なこと・不得意なこと
AIが最も力を発揮するのは、ズバリ、“正解がひとつではない作業”です。
✅ AIが得意な領域
- 大量のテキストや画像を分類・要約・生成する作業
- 言語処理(チャット対応・議事録要約・自動翻訳など)
- パターン認識(顧客の傾向分析・不正検知・故障予測など)
- ルール化できない“ふんわりした判断”の補助(例:採用書類の一次スクリーニング)
たとえば、
- 社内の議事録を「要点だけ」にまとめる
- チャット問い合わせを24時間対応にする
- 画像や動画を分析して、異常を検知する
こうした業務は、AIを活用することで「時間短縮 × 精度向上」が両立します。
──大丈夫です。
実際には、小規模な業務や個別プロジェクト単位でAIを“道具のひとつ”として使う方が、むしろうまくいきやすいんです。
AIが苦手なこと──“文脈”と“責任”が求められる仕事
逆に、AIがまだまだ苦手なのが以下のような領域です。
❌ AIが苦手な領域
- 倫理や背景を踏まえた“文脈判断”
- 業界特有の常識・人間関係をふまえた交渉や提案
- 責任や信頼を伴う“最終判断”
- 未知の事象に対する柔軟な対処(例:前例のないトラブル)
たとえば、
- クレーム対応の中で「相手の感情を読み取りつつ着地点を探す」
- 採用の最終判断で「この人の人間性・未来性」を見極める
- 顧客との関係性をふまえた値引き交渉や時期の提案
こうした作業は、今のAIには荷が重い……というより、まだ“文脈”が読めないんですね。
私も以前、「AIで営業メールの返信自動化できないか?」と試したことがありますが…結果、むしろ誤解されるリスクが高まって、手間が増えました(笑)
ただ、一部はAIを使う、ハイブリッド型にしています。定型的な返信には非常に相性がよいですからね。AI君は。
誤解されがちなポイント
「AIならなんでも解決」は幻想──現場でありがちな誤解
私たちも支援先でよく見かけるのが、「AIを入れれば何でも効率化できると思ってたのに…」という落とし穴です。
🌀 現場でよくある失敗パターン
- 「誰が使うか」が曖昧なまま導入し、現場が混乱
- データの質が悪く、AIが正しく学習できない
- そもそもAIじゃなくて“ルール化”で十分だった
- 「すぐに成果が出る」と期待しすぎて途中で挫折
実際、AIの導入で失敗した企業の多くは、“何をAIにやらせたいか”が明確でなかったケースが多いです。
──これは自戒も込めてですが(笑)
でも逆に言えば、「小さな成功体験」を積み重ねれば、必ず成果につながるとも言えます。
続いて【現場でありがちな失敗と対処法】【AI活用の正しいスタンスとは】【まとめ・問いかけ】をお送りします。
現場でありがちな失敗と対処法
どう付き合うべきか?AI活用の正しいスタンス
じゃあ、AIは使わない方がいいのか?というと、もちろんそんなことはありません。
大事なのは、
「AIに向いてる仕事」と「人間がやるべき仕事」の線引きをしっかり考えること
です。
そのために、私たちがよくやるのはこの3ステップ:
🧭 AI導入前の見極めポイント
- 業務を細分化する(タスクを分解)
- 「判断軸が明確か?」「過去のデータがあるか?」で分類
- ルール化 or AI化 or 手作業 の3分類で整理
この3ステップを踏むだけでも、
- 無駄なAI導入を防げる
- 担当者の納得感が高まる
- 成果が出やすくなる
という“地味に効くメリット”があります。
そして、私が何より大切だと思っているのは…
「現場が使いたくなる設計」になっているかどうか
です。
どれだけ高度なAIを入れても、使う人が「意味ある」と感じなければ、宝の持ち腐れ。
「ラクすること」と「手を抜くこと」は違います。
それを一緒に考える時間こそが、AI活用のスタートだと、私は思っています。
まとめ
まとめ──「AIとは何か?」を問い直すと、見えてくるもの
結局のところ、AIって「人間の思考を補助するパートナー」でしかないんですよね。
万能でもなければ、敵でもない。
うまく使えば、私たちの働き方を変える「追い風」にもなるし、無理に押し込めば「足かせ」にもなる。
だからこそ、最初にちゃんと問いたいんです。
「AIに何を期待し、何を託すか?」
これを言語化できるかどうかが、AI活用の成否を大きく分ける気がしています。
……とはいえ、最初から完璧にやるのは無理です。
「ちょっとやってみて、フィードバックを元に学ぶ」
──それで十分だと思います。
途中で挫折してもいいし、やり直してもいい。
AI導入の成功って、意外と「試行錯誤してみた人」が一番近づいていくんですよね。
この気づきが、どなたかの役に立てば嬉しいです。
よくある質問(FAQ)
- Q1. AIって一度導入すれば、勝手に賢くなるんですよね?
A. いいえ。AIは“使い方”と“フィードバック”が必要です。放置すると精度は落ちていきます。 - Q2. 社内にIT担当者がいないんですが、AI導入できますか?
A. 専門家の伴走があれば可能です。ただし「何をやりたいか」が明確であることが前提になります。 - Q3. どんな業務もAI化できますか?
A. 不可能です。判断軸が曖昧なもの、責任が伴う意思決定はAIには向きません。 - Q4. AIは人間の仕事を奪うんじゃないですか?
A. 一部は代替されますが、多くは「人間の判断をサポートする役割」です。適切な役割分担が重要です。 - Q5. ChatGPTなどの生成AIは業務で使っていいの?
A. 業種・業態によりますが、「確認・修正を前提に使う」なら非常に有効です。アウトプットの丸呑みはNGです。 - Q6. データが少ない中小企業でもAIは使えますか?
A. はい。最近は小規模データでも学習可能なAIや、汎用モデルの活用も進んでいます。外部データとの組み合わせも有効です。
AIを味方にするための次の一歩
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もし、この記事を読んで「もっと学んでみたい」「行動を始めたい」と感じた方がいれば、セレンデックでは2つの講座を用意しています。現場目線で、実践的に“使える知恵”をお届けしています。
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