こんにちは。AIと戦わず仲良くしたい平和主義者、株式会社セレンデック代表の楠本です。
「AIで仕事がなくなる」──そんな言葉を、どこかで聞いたことがあるかもしれません。
でも、実際に起きているのは少し違います。
仕事を“奪っている”のはAIではなく、AIを使いこなして、業務そのものを設計し直している人たちです。
つまり、「AI時代の勝者」は、AIをうまく“道具”として扱えている人。
仕事は消えているのではなく、“そういう人”の元に、静かに集まり始めているんです。
裏を返せば──
AIを使いこなせないままでいると、“知らないうちに吸収されてしまう側”になる。
そして残念ながら…この情報格差は、どこかで“搾取の温床”にもなってしまいます。
だからこそ、情報を取得すること・学ぶこと・考える時間に、ちゃんと時間とお金を投下する価値があるんです。
では、私たちはどうやって“吸収される側”から“吸収する側”へシフトできるのでしょうか?
今日はそんな「AIの恩恵を受けられる人・そうでない人の違い」について、現場視点でお話ししてみます。
「AIで外注費は安くなったのか?」という問い
「AIで制作コストが下がる!」という話、あちこちで聞きます。
でも、実際にこう思った方も多いのではないでしょうか?
- AIで作ってもらったけど、クオリティは結局人間チェックが必要だった…
- むしろ、やりとりが増えて逆に時間がかかった
そうなんです。AIでコストが下がるのは、“AIを理解している人”に限った話なんですよね。
実際、当社のクライアントさんでも「AIで記事生成を外注したけど、結局リライトコストがかかった」という声、何件も聞きました。これは、出力された内容のチェック基準が曖昧であったり、そもそもAIに向いていない業務にAIを導入してしまったケースが多いためです。AIは万能ではありません。
では、なぜこうなるのか?──
🔍 原因は「AI前提の設計」がないから
- プロンプト(指示文)の質が不十分
- 出力された内容のチェック基準が曖昧
- そもそもAIに向いてない業務に使っている
AI導入=自動化ではないんです。AIの使いどころ・人間の役割分担を設計しないと、むしろ非効率になるケースがほとんどです。単にツールを導入するだけでは、期待した効果は得られません。
ここで重要な現実があります。
AIの進化はすごいです。ですが、たとえば発注者が「AIで生成できるなら安くなるよね?」と外注先に相談しても──
- 「AIでやっても最終チェックは人手が必要なんで…」
- 「いや、うちは品質にこだわってるんでAIだけでは…」
というように、結局“AIを使いこなしてる人”にしか、恩恵は届かないんです。現時点では。これは、AIを活用する側のスキルとノウハウが、まだ特定のプロフェッショナルに集中している現状を示しています。
そしてもう一つ。
多くの企業が「AIで効率化しました」「工数削減に成功しました」と発信していますが、実際には、価格が劇的に安くなっているわけではないことも多いんです。
その理由を聞くと──
- 「人間のチェックが必要で…」
- 「品質担保があるので…」
という声がよく出ますが、これも半分は本音で、半分はポジショントークの面もあるかもしれません。なぜなら、AIで浮いた工数をすべて価格に反映してしまえば、利益が出なくなるからです。企業としては、効率化によって得られた利益を内部に留保し、さらなる投資や事業拡大に回すのが自然な流れと言えるでしょう。
つまり、AIによる効率化はあくまで“企業努力”の一環であり、その恩恵は“まず自社の中”に留まる構造になっているんです。これが現在の市場の状況です。
今後は別の記事で深掘りする予定ですが──
どこかが抜け駆けして、AIをフル活用した部外者が価格破壊を起こす構造は、間違いなく進行しています。
この構造のポイントは、「もともとその業界でやっていた人」と「完全な部外者」の差です。
既存事業者は、従来の価格帯を維持しつつ、AIによって裏側で業務効率を大幅に改善し、利益率を上げていく。
つまり“価格を下げすぎない範囲で、内部で利益を確保する”という戦略です。
一方で──
全くの部外者は、既存の価格感なんて関係なく、「この価格でできるじゃん」と思い切って業界に殴り込んできます。
そして、発注者もすでに「100点満点のクオリティじゃなくていい」「60点で十分なら10万円で十分」という“実用主義”にシフトしつつある。
AIは、それを可能にしてしまうんです。
この変化は静かですが、確実に広がっています。
現状で本当に恩恵を受けているのは、“AIを直接使って構造を変えている側”。
発注側やユーザー側の立場では、「なんだかんだで、そこまで変わっていない」というのがリアルなところです。
「AIができる人に仕事が取られる」という誤解(続き)
このフレーズ、SNSや記事などでよく見かけますが──
もう少し踏み込んで考えてみる必要があります。
「AIができる人」って、どんな人でしょうか?
- AIの機能を熟知してる人?
- ChatGPTを自在に操れる人?
- プロンプト職人のような技術者?
……たしかに、そういう面もあります。
でも私が見てきた中で、本当に“仕事を吸収している人たち”には、もっと共通した特徴があります。
それは、「自分の仕事の構造」を理解している人たちです。彼らは、単にAIツールを操作するだけでなく、そのツールをどう業務に組み込むかを深く考えています。
たとえば──
- この作業、どこが繰り返しで、どこが創造的なのか
- 誰のために、何を、どう届けるのか
- ボトルネックはどこで、どこにAIを当て込めば流れが変わるか
そういう“構造のレイヤー”で物事を見られる人ほど、AIを使った時に圧倒的な成果を出します。
逆に、「AIすごい!」「こんなこともできる!」だけで止まっていると、
道具に振り回されて、結果として“できる人に吸収されていく側”に回ってしまうんです。なぜなら、自らが業務の流れを設計できないと、ツールを最大限に活用できず、結局はスキルを持つ他者に依存してしまうからです。
✅ 「できる人=構造を動かせる人」
ここがポイントです。
AIを使える=ツールを操作できる人、ではない。
“構造を動かせる人”こそが、本当の意味で「できる人」なんです。
それは、ある意味で「仕事そのものの設計者」になるということ。
たとえばデザイナーであれば、
- AIで素材を作ることよりも、全体の表現トーンやユーザー導線をどう組むかが価値になります。
マーケターであれば、
- AIにコピーを書かせることよりも、「この3パターンでABテスト回す設計」が強さになります。
──つまり、“AIに何をさせるか”を決められる人が、主導権を持つんです。彼らは、AIを単なる作業ツールではなく、戦略的なパートナーとして活用することで、自身の専門性を高め、より大きな価値を生み出しています。
💡 じゃあ、何から始めればいいか?
「そんな構造とか、急に言われても…」と感じた方も大丈夫です。
構造を理解するために、一番手っ取り早いのは、“分解してみる”こと。
- 自分の1日の仕事を10分単位で棚卸ししてみる
- 定型化している部分を黄色マーカーで塗ってみる
- 「これ、AIならどうやるか?」と仮説を立ててみる
──こういう小さな観察から、
- 「意外とAIでいけるな」
- 「ここは人間でないと無理だな」
という“見立て力”が育っていきます。この力が、AIを効果的に使いこなす上で不可欠な要素となります。自身の業務を客観的に分析し、AIの適用可能性を見出すことで、新しい働き方を創造できるでしょう。
それが“AIに使われる人”ではなく、“AIを使える人”への第一歩になります。
私自身、どうAIと付き合っているか?
正直、私も最初はAIに“夢を見ていた側”でした(笑)。
ChatGPTに初めて触れたときなんて、もう衝撃で。
でも──すぐに現実に戻されました。
- 出てくる文章は流暢だけど“芯”がない
- クライアントにそのまま出せる精度じゃない
- しかも指示の出し方次第で全然違う結果になる
ここでようやく気づくんです。
「あ、これは“自動化ツール”じゃなくて“対話型の道具”なんだな」と。
✅ 最初のうちは、むしろ“使えば使うほど遠回り”
AIを導入したらすぐ楽になる──そんな幻想は、すぐ壊れました。
- 文章生成を任せたけど、結局3割くらいは手直しが必要
- 資料作成を頼んだけど、論理の飛躍や文脈ズレが多くて逆に時間がかかる
- AI活用を進めようとしたけど、社内での共有が難航…
つまり、“ちゃんと設計してから使わないと、むしろ非効率になる”という現実を体感したんです。これは多くの企業が直面する課題であり、AI導入前の計画と準備がいかに重要であるかを物語っています。
🔁 「行って戻って、また行く」の繰り返し
AIとの付き合い方って、ほんとこの繰り返しです。
- すごい!→うまくいかない→でも工夫したらまたすごい
- 期待→挫折→改善→手応え
この“行ったり来たり”の先に、ようやく「これはいける」という“自分なりの型”が見えてきます。この経験こそが、AIを真に使いこなすための貴重な学びとなるのです。試行錯誤を恐れず、改善を続けることで、AIはより強力なツールになります。
たとえば今なら…
- 記事構成は人間でラフだけ決めて、本文はAIでたたき台を出す
- 提案書はAIで3パターン作ってから、全体設計に人間が戻る
- 会議録はAIで要約、ナレッジ共有はNotionと自動連携
…こういう分業の仕組みを作って、ようやく本当の意味で“時短”や“効率”が実現できてきたんです。これは、AIの得意な部分と人間の得意な部分を明確に切り分け、協業させることで、最大の効果を引き出すアプローチです。
☕ AIに“使われる”のではなく、“育てる”という視点
そして気づいたのは、AIは育てるものだという感覚です。
- 自分の業務に合わせてプロンプトを調整する
- 過去の成果物を読み込ませて文体を合わせる
- どこで任せて、どこは人間が見るかルール化する
…これらを積み重ねていくうちに、「うちのAI、ちょっと仕事できるようになってきたな」と感じる瞬間が増えてきました(笑)。AIは、使うほどに賢く、そしてあなたの業務に最適化されていくのです。
結局、AIは「使う前提の再設計」が命
AIを使えば“楽になる”──そう思っていた時期が、私にもありました。
でも、結論から言うと、“楽になる”前にやるべきことが山ほどあるんです。
それは何か?
業務そのものの“前提”を見直すこと。
🔍 AIを「あとから足す」のではうまくいかない
これ、けっこう多くの企業で起きてる話なんですが──
- 「AIで資料作ってくれるらしいから、お願いしてみよう」
- 「AIでマーケティングできるって聞いたので、試しにやらせてみた」
…という“アドオン型”の導入。
でも、ほとんどが途中で止まります。なぜか?
既存の業務設計が、AI活用に“耐えられてない”からです。AIは既存のワークフローにポンと置くだけでは機能しません。根本的な業務の見直しが必要です。
✅ 再設計の第一歩は「前提条件とゴールの言語化」
AIを使うには、まず以下のような“再設計の問い”が欠かせません。
- 今の業務は、そもそも何のためにあるのか?
- どこに手間やムダが集中しているか?
- 「AIを使ったらどうなるか?」ではなく「AI前提ならどう組むか?」
そして何よりも大切なのが──
「どこを目指すのか」=ゴールの明確化。
- 速さを求めているのか?
- 品質を一定に保つことが目的なのか?
- それとも属人性の排除・仕組み化なのか?
これが曖昧だと、AIは“便利そうで不便な道具”になってしまいます。ゴールが明確でないままAIを導入しても、期待通りの効果は得られません。まず目的をはっきりさせましょう。
💡 発注する側にも「設計視点」が求められる時代
外注でAIを活用するケースも同じです。
- 「AIでやってくれれば安くなりますよね?」
- 「AI使えば早くなりますよね?」
──そう思うのは当然ですが、その前提となる“設計”ができていないと、AI活用はむしろ高くつくんです。
発注者側に必要なのは、もはや「お願いの仕方」だけじゃなく、
「AIに向いた仕事の切り分け方」「仕組みの組み替え方」まで踏み込む視点です。これにより、発注側と受注側の双方にとって、より効率的で価値のある協業が実現します。
本質は「恩恵を受ける力」=“使える側”への変換
「AIすごいよね」「時代が変わるよね」──
そんな空気感は、もう広がりきっていると思います。
でも、私がいろんな現場を見ていて思うのは、
“AIの恩恵を受けている人”って、実はごく一部だということです。
では、その違いは何なのか?
──「AIを使っているか」ではなく、「AIを使って仕事の形を変えているか」なんです。この視点の違いこそが、AI時代における成功の鍵となります。
① 「わかる」だけでは意味がない
AIの概要を知っている人は多いです。
でも、それで“使える人”にはなりません。
- 「ChatGPTって、文章作ってくれるやつでしょ?」
- 「画像生成できるAIが話題ですよね」
……うん、知ってる。それは入り口としてはOKです。
でも、“知っている”と“使える”の間には、実務的な深い溝があります。知識と実践は全く異なる次元のものです。実際に手を動かし、試行錯誤することでしか得られない学びがあります。
② “触ってみる”ことでしか得られない感覚がある
何度も使って、失敗して
- 思った通りに動かなくて試行錯誤して
- 自分なりの“勝ちパターン”を掴んでいく
──この過程を経て初めて、「自分にとってのAI活用」が見えてくる。つまり、頭で理解するより、まず手を動かす方が早いんです。実際に試すことで、AIの特性や限界、そして最適な使い方が肌感覚として理解できます。
しかも、今は無料で始められるツールも多い。
時間さえ投下できれば、誰でも“きっかけ”は掴めます。
③ 結局、勝負は「組み合わせと設計力」
AI単体で完結することって、実は少ないんです。
- ChatGPTで文章生成 → Notionでナレッジ化
- Midjourneyで画像生成 → Canvaでデザイン統合
- Whisperで議事録 → ZapierでSlackへ自動連携
……このように、複数のツールを組み合わせて“仕組み”にできるかどうかが、真の差を生む。単なるツールの利用に留まらず、それらを連携させてワークフロー全体を効率化する能力が求められます。
言い換えれば、
「便利な道具」から「業務の骨組み」に昇華させられるかどうか。
そこまで行けた人だけが、AIの“本当の恩恵”を受けられるわけです。このレベルに達すると、AIは単なる時短ツールではなく、ビジネスの変革を促す強力なエンジンとなります。
まとめ:AIは「AIは、誰でも使える道具だけど、誰でも扱えるわけじゃない──そんな存在です。」になった
AIは、たしかに“すごい道具”です。
でもそれは、「勝手に成果を生む魔法の箱」ではありません。
“使い方”と“設計”次第で、成果の幅がまるっきり変わる道具──それが、AIの正体です。
✅ AI時代は、“ラクができる人”と“振り回される人”に分かれる
- 外注すれば安くなる? → 設計がなければ変わりません
- AIに任せれば楽になる? → “どこに”どう使うか決められなければ、逆に手間です
結局、“恩恵を受けられる人”は、自ら考えて、使ってみた人たちです。彼らは、AIの特性を理解し、自身の業務にどう適用するかを主体的に見極めています。
- 失敗しながら学び
- 試行錯誤を重ねて自分なりの型をつくり
- 業務を再設計して、仕組みにしていく
このプロセスがあるからこそ、「使える人」になるのです。AIは単なるツールではなく、継続的な学習と実践を求めるパートナーと言えるでしょう。
☕ AIは、やさしくもシビアな道具です
「誰にでも開かれている」のに、
「行動した人にしか応えてくれない」。
──それが、今のAIとの付き合い方なんだと思います。
だからこそ。
- 「なんとなく気になるけど、うちにはまだ早いかも…」
- 「ちょっと難しそうで、一歩が踏み出せない…」
……そんなふうに感じている方にこそ、私は伝えたいです。
小さくてもいい。まずは、自分で触れてみること。
それが、AIを“恐れる対象”から、“使える味方”へと変える、最初の一歩になるはずです。
✅ もし、「使い方の道筋」を一緒に考えたければ
- どこにAIを使えばいいか?
- どのツールを選ぶべきか?
- 社内にどう定着させるか?
──そんな問いを一緒に整理したいと思ったときは、ぜひ私たちに声をかけてください。
セレンデックは、“現場に合ったAI活用”を、寄り添いながら設計・支援しています。
未来の働き方を、“自分たちの手で設計する”ために。
一緒に考えていきましょう。
セレンデックではAIウェブディレクター育成講座を開催しています。ご興味ある方は是非ご参加ください。体験会、説明会も実施しています。
よくある質問(FAQ)
- Q1. AIを導入すると、すぐにコスト削減や効率化が実現できますか?
A. いいえ、AI導入は単なる自動化ではなく、「AI前提の設計」が必要です。適切な業務設計や役割分担を行わないと、かえって非効率になる可能性があります。 - Q2. 「AIができる人」とは、具体的にどのような人を指しますか?
A. AIの機能を熟知しているだけでなく、「自分の仕事の構造」を深く理解し、どこにAIを適用すれば業務全体が最適化されるかを見極め、設計できる人を指します。 - Q3. AI活用を始めるにあたり、何から手をつければ良いでしょうか?
A. まずは自分の業務を細かく「分解してみる」ことをお勧めします。どの部分が定型作業で、どこが創造的なのかを洗い出し、AIで代替可能か仮説を立てることで、「見立て力」が養われます。 - Q4. AIを使ってみたが、期待通りの成果が出ず挫折しそうです。どうすれば良いですか?
A. AIとの付き合い方は「行って戻って、また行く」の繰り返しです。うまくいかない経験を通じて、プロンプトの調整や過去の成果物の読み込み、人間との分業ルール化などを積み重ねることで、「自分なりの型」が見つかり、本当の効率化が実現できます。
「これ、人間いらんやん…」って、真面目に思いました。