こんにちは。「SNSで時間を浪費するより本を読もう活動」推進派の株式会社セレンデック代表の楠本です。
今回は「書籍をSLM(Small Language Model)化して活用する方法」に絞ってお話しします。
まず簡単にSLMについて少し解説させてください。
SLMとは、Small Language Model(スモール・ランゲージ・モデル)の略で、ChatGPTなどのLLM(Large Language Model)と比べて情報ソースをあえて”狭く・深く”限定して構築する、小さなAIモデルのことです。
LLMがインターネット全体から情報を引っ張ってきて”それっぽい答え”を出すのに対し、SLMは特定の社内ナレッジや専門書籍など、信頼性の高い情報だけを前提に出力を行うため、業務での活用や実務判断において非常に精度が高くなります。
ざっくり言えば、
- LLM=幅広く浅く、平均100人の意見
- SLM=狭く深く、専門家5人の知見だけに絞る
社内業務や教育、助成金申請や営業トークスクリプト作成など、あらゆる実務で「正確な知識だけが欲しい」場面に強いのがこのSLMなんですね。
※SLMの概念や構築法については別記事で詳しくまとめていますので、今回は「書籍×SLM」という活用パターンにフォーカスしてお話ししていきます。
正直、このテーマだけで1記事にしたほうが良いと思ったのは──
実際に試してみて、本の価値がまるごと”実務資産“に変わる感覚を得たからです。
生成AI時代、知識は”持っているか”より”使える状態にあるか“が重要になってきました。
では、どうやって書籍を「使える状態」に変えるのか?
私が実践している流れとその気づきを、余すことなくお伝えしていきます。
きっかけは「Kindleに感じた限界」
私、Kindleには数百冊分の本が入っているんです。
めちゃくちゃ買ってましたし、たくさん読んでもいました。いや、積んでもいました(笑)。
でも、2024年に入って──やめました。
なぜか。
理由は単純で、「AIに使えないから」です。
Kindleで本を買うと、当然その本は”自分のもの”だと思いますよね?
でも実際は”閲覧権”しかない。つまり、PDFで取り出すこともできなければ、
ChatGPTやClaudeといった生成AIに読み込ませることもできないんです。
そうなると、「この本に何が書いてあったか」を毎回手動で引っ張ってこなければならない。
──これ、正直ムダですよね。
一度読んだ本を、知識として”再利用できる“形にしておく方が効率的だし、
なにより、その知識を「他の誰かが使える」状態にできることが本当に価値になる。
じゃあどうするの? 書籍SLM化の実際
具体的にはこんな流れでやっています。
ステップ①:紙の本を買う(Kindleはやめました)
Amazonで紙の本を買ってます。ポイントは「最初はちゃんと読むこと」。
読まずにいきなりPDF化しても、プロンプトで使いこなせないので。
ステップ②:ブックスキャンに送る
Amazonで買ったら、配送先をそのまま「ブックスキャン」にします。
読んだ後に送ってもいいし、最初からPDF目的なら直送もOK。
ステップ③:OCR処理を忘れずに
これ、重要です。
PDFって言っても、画像だけだとAIは読めません。
Adobe AcrobatでOCR(文字認識)処理をかけておかないと、文字として読み取れないんです。
ステップ④:GPTに読み込ませる
ChatGPTの「カスタムGPTs」やGoogleの「ノートブックLM」にPDFをインポート。
そしてこう聞きます:
すると──ちゃんとその本の文脈に沿った提案が返ってくるんですよ。
複数冊まとめて”ぶち込む”とどうなるか?
ちなみに私は、セールスライティング系の書籍を5冊、まとめてPDF化し、ひとつのカスタムGPTにぶち込んでます。
1冊だけでも使えますが、類似テーマで複数冊にすると「この本には書かれていないけど、別の本には出てくる」という補完効果が働いて、回答の幅が広がるんです。ただ、やりすぎは注意です。情報量がやみくもに多くなると「LLM」になり「SLM」の良さがなくなります。目的に沿ってテーマを絞ってくださいね。
たとえば、こう聞きます:
すると、各本の理論に基づいた提案が”その本を熟読したかのように”返ってくる。
いやもちろん、読んだほうがいいんです。
でも「読み返す時間を減らし、活用時間を増やす」ことができるという意味で、これは実務上かなり有用です。
実際どう使ってるの? SLM、書籍を活用したカスタムAIの活用例
このへんは、ChatGPTのカスタムGPTsや、GoogleのノートブックLMが本当に使いやすいです。
- 営業資料のたたき台:構成案を本に基づいて提案させる
- 研修資料の下地:教育本から抽出した構成案を生成
- ブログのプロット生成:思考法・構成技法本をSLM化
- アイデア出しの壁打ち相手:視点を忘れてたときの”再発見”に使う
- カスタマーサポート:特定の分野の本と自社の情報をインプットしてその内容に沿った回答をしてもらう
書籍SLM、カスタムGPTSなどの活用により、実務における知識の活用効率が大幅に向上し、プロジェクトの品質向上と時間短縮の両立が可能になります。特に複数の専門書から抽出した知見を組み合わせることで、単一の情報源では得られない多角的な視点を持った提案やアイデアを生み出すことができます。
セレンデックではAIウェブディレクター育成講座を開催しています。ご興味ある方は是非ご参加ください。体験会、説明会も実施しています。
知識は「読む」より「使える状態」に
読書って本来、「読むこと」が目的じゃないですよね。
“得た知識を活かす”ことが目的。
でも、読んで終わりになってる本、多くないですか?
私もそうでした。読みっぱなしで、あとは忘れる(笑)
それが、SLMにすることで”活用できる知識”として再定義できるようになった。
知識は、手元にあるだけでは価値にならない。
“使える形にしておく“ことが重要。
よくある質問(FAQ)
- Q1. SLMはどのような企業に適していますか?
A. 特定の専門知識や社内ナレッジを効率的に活用したい企業、例えばコンサルティング会社や研究機関、教育機関などに特に適しています。 - Q2. SLMの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 導入期間は対象とする情報量や複雑性によって異なりますが、数週間から数ヶ月で基本的なモデルを構築することが可能です。 - Q3. 自社でSLMを構築するためのサポートはありますか?
A. はい、セレンデックではSLM構築に関するコンサルティングや技術サポートを提供しております。詳細はお問い合わせください。
これらのFAQでカバーできない疑問や、具体的な導入検討についてのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。SLMの導入は企業の知識資産を最大化し、競争優位性を構築する重要な戦略的取り組みです。適切な設計と運用により、組織全体の生産性向上と意思決定の質的向上を実現できます。
最後に:SLMは”自分専用の読書チーム”
この書籍SLM化、感覚としては「その本を完全に理解している人が社内に1人いる」ような状態を作れます。
何度でも質問できて、関連知識も整理してくれて、応用も提案してくれる──
そんな”読書チーム“を、AIとともに持てる感覚。
今後はこの書籍SLMを、部門単位やテーマ別に増やしていく予定です。
知識は”読む”より、”使えるように設計する“時代へ──。
この記事が、皆さんのAI時代の知識戦略のヒントになれば嬉しいです一緒に頑張っていきましょう!。
もう、細かい所まで読んでなくてもいいかもしれない(笑)。