はじめに ― 物件探しのリアルな現場から
こんにちは。物件を探しまくって間取りの特徴をAIに相談することを繰り返し、今となっては間取り図と方位を見れば一瞬で善し悪しが分かる家相マスターなりました、株式会社セレンデック代表の楠本です。
実は今、私自身も絶賛、物件探しの真っ最中なんですが──これが本当に、営業マンによって体験が天と地ほど違うと痛感しています。
そもそも、不動産仲介というビジネスは構造上、同じ物件をどの会社から申し込んでも中身は同じです。
専任物件を除けば、物件データはほぼ共通のデータベース(レインズなど)に載っていて、どこからでも紹介可能。
これはまるで「卸売商材を複数の小売店が売っている」のと同じ構造です。
普通なら、同じものなら安い方がいいですよね?それなのに、なぜわざわざA社ではなくB社から申し込む人がいるのか──。
その答えが「営業マンの腕の差」です。
ただ、残念ながらその差がポジティブに出ることばかりではありません。
私の探している中でも、いわゆるおとり物件に出くわすことは珍しくなく、問い合わせた瞬間は空きがあるように見えても、店舗に行くと「実は昨日申し込みが入りまして…」なんて話になる。
中には、もう申し込みが入っているのを知っていながら「まずは来てください」と呼び込み、結果的に二番手に回される…なんてケースもありました。
もちろん、逆に素晴らしい営業マンもいます。
例えばある方は、内見中に部屋の良し悪しだけでなく、生活の細部までアドバイスしてくれました。
- 「最近のドラム式洗濯機は大型化しているので、この廊下やドアの幅では搬入できない可能性があります。購入前に寸法を測りましょう」
- 「ゴミ捨て場は道路を挟んだ向かいにあり、朝8時までに出さないといけません」
- 「この物件はフリーレント1ヶ月の条件がつく場合があります。交渉してみましょう」
- 「仲介手数料は通常1ヶ月分ですが、この案件は半分にできる可能性があります」
これらの具体的なアドバイスは、顧客が新しい生活をリアルにイメージするために不可欠な情報です。単に物件のスペックを伝えるだけでなく、そこに住む人の視点に立った提案があることで、顧客は安心感と信頼を抱きます。特に初めての引っ越しや子育て世代にとって、見落としがちな細かな情報が、物件選びの決定打になることは少なくありません。このように、顧客の潜在的な不安を先回りして解消するアプローチこそが、営業マンの真価を問われる部分と言えるでしょう。
こういう提案をされると、単なる“物件案内人”ではなく、“暮らしのコンサルタント”に見えるんですよね。
一方で、ただ間取りを見せて「どうですか?」で終わる営業もまだまだ多い。
しかも今は、SUUMOやHOME’Sなどに同じ物件が並び、条件もほぼ丸見えの時代ですから、情報だけなら顧客の方が詳しいこともあります。
結局、同じ商品を売るなら、価格以外でどう差別化するのか。
ここが、AI時代の不動産仲介業において経営者が真剣に向き合うべきテーマだと感じています。
課題提起 ― 「右から左の営業」と「ソリューション営業」の差
私が強く感じたのは、同じ物件を売るにしても、営業マンの姿勢で体験価値はまったく違うということです。
単に「いいですね、この部屋どうですか?」で終わる営業と、顧客の暮らしを想定して提案を重ねる営業。この差が、顧客満足度や契約率、そして紹介件数に直結します。
提案型営業の具体例
- 家電搬入や家具配置の実測アドバイス
- ゴミ捨て場や駐輪場の位置、ルールの説明
- 契約条件(フリーレント、手数料)の交渉可否
- 周辺環境(学校、スーパー、病院)の生活情報提供
これらの提案は、顧客が抱える漠然とした不安を具体的に解消し、物件に対する信頼感を高めます。引っ越し経験が豊富な方には当たり前のことでも、初めての顧客にとっては非常に重要な判断材料となります。例えば、最近の大型家電は設置スペースだけでなく搬入経路も重要になるため、事前の寸法確認は必須です。ゴミ出しルールや周辺の生活情報も、日々の暮らしの快適さに直結するため、丁寧な説明が顧客の安心につながります。
こうした情報は、引っ越し経験豊富な人には当たり前でも、初めての顧客にとっては重要な判断材料です。
にもかかわらず、現場では営業マンのスキルと意識に大きなばらつきがある。
これが不動産仲介の属人化問題です。
実践・対処法 ― AIで“提案型営業”を全員ができる組織に
この属人化を解消し、組織として営業力を底上げするために有効なのがAIです。
AIは、営業マンの頭の中にある提案の引き出しをデジタル化し、誰でも同じ品質の提案を瞬時に引き出せる環境を作れます。
そこで、ここではすぐに使える参考プロンプト集をまとめました。これらのプロンプトをコピー&ペーストして、日々の業務にご活用ください。
① 物件紹介文+生活提案セットの自動生成
以下の物件情報をもとに、30代子育て夫婦向けのワクワクする物件紹介文を作ってください。 必ず「周辺環境」「生活の便利さ」「将来の暮らしやすさ」に触れてください。 【物件情報】 ・間取り:3LDK ・築年数:8年 ・駅徒歩:7分 ・設備:オートロック、宅配ボックス、対面キッチン
② 契約条件の自動抽出と交渉ポイント整理
以下の物件概要から、交渉可能性がある項目(フリーレント、仲介手数料、敷金・礼金、初期費用)を一覧化し、 営業時に説明すべき順番で整理してください。
③ 現地チェックリスト自動作成
以下の物件情報から、内見時に必ず確認すべきポイントのチェックリストを作成してください。 生活動線や家電搬入の可否、防犯面、ゴミ捨て場、駐輪場の位置なども含めてください。
④ 顧客タイプ別トークスクリプト
以下の顧客タイプごとに、初回案内時のオープニングトークと提案ポイントを作成してください。 タイプA:初めての引っ越しをする20代単身者 タイプB:子育て中の30代夫婦 タイプC:地方から転勤してくる40代ファミリー
⑤ 口コミ返信テンプレート作成
以下のレビューに対して、誠実かつ温かい印象を与える返信文を3パターン作ってください。 レビュー内容:「担当の方がとても丁寧で、内見から契約まで安心できました。」
⑥ SNS投稿&ハッシュタグ生成
以下の物件情報をもとに、Instagram投稿用の文章とおすすめハッシュタグ20個を作ってください。 文章は100〜150文字で、冒頭で感情を引きつけるキャッチコピーを入れてください。
⑦ 比較表の自動作成
以下の3物件情報を比較し、「価格・駅徒歩・築年数・設備・初期費用」の項目で表を作ってください。 さらに、各物件の強みを一文でコメントしてください。
⑧ トラブル防止の契約前FAQ
以下の契約条件をもとに、契約前に説明すべき注意事項をFAQ形式で作成してください。 FAQは質問形式+答え形式で5〜7項目作成してください。
⑨ 周辺情報ガイド作成
以下の物件住所周辺の「スーパー・コンビニ・学校・病院・公園」を調べ、 ファミリー向けに生活の便利さをアピールする文章を作ってください。
応用編 ― AIを“会社専用の営業コーチ”にする方法
まず前提 ― カスタムGPTは有料版が必要
「ChatGPTって無料で全部できるんでしょ?」と誤解している方は非常に多いです。
しかし、カスタムGPTを作る機能は無料版では使えません。
- 必要プラン:ChatGPT Plus(月額20ドル)以上
- 無料版との違い:
- 最新モデル(GPT-4oなど)が使える
- ナレッジ(社内資料アップロード)機能が使える
- カスタムGPT作成が可能
- 高度なデータ解析(Code Interpreter)が利用可能
- 無料版(GPT-3.5のみ)では、毎回ゼロから指示を出す必要があり、再現性が低い
AIをビジネスで本格的に活用し、社内のノウハウを資産化するためには、無料版の範囲では不十分です。カスタムGPTは、企業の特定の業務やルールを学習させることで、より精度の高い、再現性のあるアウトプットを可能にします。この機能は、特に不動産業界のように属人的なスキルが求められる分野において、組織全体の底上げに大きく貢献します。
カスタムGPTとは?(初心者向け解説)
カスタムGPTは、ChatGPTに自社独自の情報・口調・ルールを覚えさせた“専用版AI”です。
作成すると、社内全員が同じ条件でAIを利用できるため、提案の品質が均一化します。
できることの例
- 社内マニュアルやFAQを読み込ませ、即時に回答
- 物件紹介文やトークスクリプトを自動生成
- クレーム防止のための契約前説明テンプレを提示
カスタムGPTを導入することで、新人でもベテラン営業マンと同様の質の高い提案を瞬時に行うことが可能になります。顧客対応の属人化を防ぎ、どの担当者であっても一定水準以上のサービスを提供できるようになるため、顧客満足度の向上に直結します。また、マニュアルやFAQをAIに学習させることで、従業員は必要な情報を探す時間を大幅に短縮し、より本質的な顧客対応に集中することができます。
ナレッジ機能(Knowledge)の使い方
- 概要:PDFやWordなどの社内資料をカスタムGPTにアップロードし、会話中に参照できるようにする
- 制限:1つのカスタムGPTにつき最大20ファイル(後から差し替え可能)
- おすすめ初期登録ファイル:
- 内見チェックリスト
- 契約前FAQ
- 接客ポリシー
- 地域別生活情報メモ
- トーク台本(交渉用)
ナレッジ機能は、企業の独自のノウハウやルールをAIに学習させる上で最も重要な機能の一つです。例えば、社内で培ってきた物件ごとの強みや、地域特有の生活情報、顧客対応の際の注意点などを文書化し、ナレッジとして登録することで、新人教育の効率化や情報共有の円滑化が図れます。これにより、社員は常に最新かつ正確な情報に基づいて行動でき、顧客への信頼性の高い提案が可能になります。
運用のコツ(現場が使う仕組み化)
- ファイル名は短く(例:`02_契約FAQ.pdf`)
- 月1回の更新日を決めて定期メンテナンス
- 「会話スターター」機能で現場向けの質問ボタンを用意
- 朝礼で1回押して見せる → Slackなどに貼って全員が参照
AIツールを導入するだけで現場に定着させるのは困難です。運用には、現場が日々の業務の中で自然と使えるような仕組みづくりが不可欠です。ファイル名をシンプルにしたり、定期的なメンテナンスで情報を常に最新に保つことで、従業員はAIを信頼し、活用するようになります。また、「会話スターター」機能を使ってよくある質問への回答をAIにさせたり、朝礼で活用事例を共有することで、AI活用のハードルを下げ、組織全体での利用が促進されます。
書籍PDF活用(社内限定)
- 営業やセールス心理学の名著を社内用に要約し、ナレッジに追加
- 例えば「営業クロージング大全」を章ごとに3〜4行に要約し、具体例付きで登録
- AIに「この顧客にはどのクロージング手法が適切か?」と聞けば、本の知識を即提案に変換可能
- 著作権保護のため社外利用は禁止
書籍の知識をナレッジとしてAIに学習させることで、個人の学習時間や知識量の差を埋め、全社員が質の高い営業スキルを身につけるためのサポートができます。特に、営業の現場で即座に活かせる具体的な知識を要約して登録することで、顧客対応中に迷った際もAIが最適なアドバイスを提示してくれます。これにより、社員一人ひとりのスキルアップだけでなく、組織としての提案力の強化に繋がります。
AIと読書を組み合わせた学習方法について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
👉 LLMとSLMの使い分け。業務効率を最大化するAI活用法を徹底解説
ツール比較表(どれを使うべき?)
機能 | ChatGPT(Plus) | Claude 3.5 | Notebook LM |
---|---|---|---|
カスタムAI作成 | ○(カスタムGPT) | ×(会話のみ) | ○(ノート単位) |
ナレッジ登録 | ○(20ファイル) | ○(容量大きい) | ○(制限緩い) |
モデル精度 | 高(最新GPT-4o) | 高(長文強い) | 中(情報整理型) |
ファイル容量 | 制限あり | 大容量可 | 制限少 |
向き不向き | 再現性重視・社内運用 | 長文読解・書類比較 | 情報整理・共有 |
AI活用がもたらす4つのポジティブな変化
- AIで「最低限これだけは言える営業マン」を全員に実装
- 新人育成スピードが2〜3倍に
- 契約率・顧客満足度の底上げ
- 口コミ・紹介案件が増加し、広告費依存が減少
AI導入は、単なる業務効率化に留まらず、組織文化そのものに変化をもたらします。営業力の標準化により、属人化が解消され、新人でも早期に戦力化できます。これにより、顧客対応の質が底上げされ、結果として契約率や顧客満足度の向上に繋がります。さらに、良い口コミや紹介案件が増えることで、新たな顧客獲得のための広告費依存から脱却し、より持続可能な経営が可能になります。
AI時代を勝ち抜く第一歩:無料オンライン相談のご案内
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私たちは、現場の“痛み”を理解した上で、経営戦略とAI導入を同時に設計します。
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- 業種・業務内容に合わせたAI活用ロードマップ策定
- カスタムGPT構築と社内ナレッジ化支援
- 営業・マーケティング・カスタマーサポート領域でのAI実装
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目的:業務効率化・売上向上・人材育成を同時に実現
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